あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、1970年代にアメリカで開発された「怒り」と上手に付き合うための方法です。「アンガーマネジメント」は、「怒らない」ことではなく、「怒りの感情と上手につき合うこと」を目的にしています。

 

「怒ること」は人間の自然な感情なので「怒り」自体を完全になくすことは不可能です。しかし、攻撃的に相手に伝えてしまうとその後の関係が上手くいかなくなってしまったり、あとで後悔することもあるでしょう。逆に自分の中に抑え込んでしまうとストレスにつながり心も体も調子をくずしてしまいます。

 

怒りの裏側には「わかってもらいたい」という感情が隠れている場合が多くあるので、何に対して怒りを感じているのかをまず自分でしっかり把握しましょう。その上で、相手にどうして欲しいのかを上手に伝えましょう。人間は「怒り」に対して「怒り」で反応してしまうことが良くあります。「怒り」は伝染するのです。古代ギリシャの哲学者 アリストテレスも「怒ることは誰にでもできる。ただ怒るのは簡単なことである。しかし適切な相手に、適切な程度に、適切な場合に、適切な目的で、適切な形で怒ることは容易ではない。」と言っています。だからこそ、「怒りの感情と上手につき合うこと」が大切になってくるのです。

 

アンガーマネジメントには「対処術」(怒りにすぐ効く方法)と、「体質改善」(怒りにくい考え方を身につける方法)があります。この2つを実践していくことで、怒りの感情とうまくつき合えるようになる、と言われています。


怒りにすぐに効く方法(対処術)

 

★ 6秒待ってみよう!

怒りのピークは6秒間だと言われています。そのため、この6秒間怒りを抑えることができれば、怒りに任せた衝動的な行動を抑えることができます。1から順番に数を数えてもいいですが、「4を足していく」、「3を引いていく」などのように少し頭を使う数え方の方がおすすめです。また、深呼吸をしながら6秒間過ぎるのを待つのもいいでしょう。4秒かけて鼻から息を吸い、8秒かけて口から息を吐きます。

 

★ 目の前のことに集中してみよう!

今に意識を集中させる方法です。「こんなことをされた!!」「あんなことをしてやろう!」というように過去や未来のことではなく、怒りとは関係ないところに意識を向ける方法です。相手の服の模様、コーヒーカップの柄や素材、てのひらのしわの数や長さなどにしっかりと注意を向け詳しく観察しましょう。

 

★ 怒りに点数をつけてみよう!

怒りを感じていない状態から激しい怒りまで10段階で点数をつける方法です。点数をつけることで客観的に見つめることができ、怒りに対処しやすくなったり、怒りの傾向を知ることができます。それによって自分にとって大切なものや抑え込んでいた自分の感情に気づくことができます。

 

★ その場から少し離れてみよう!

いったんその場を離れて気持ちをリセットする方法です。この時大切なのは、何も言わずにいきなりその場を立ち去るのではなく「落ち着くまでちょっと待って。」と言い、さらに戻ってくる時間を相手に伝えることです。話し合いに戻るまでに他の「対処術」など気持ちが落ち着くことをするのも方法です。

 

★ ポジティブなことを考えよう!

「大丈夫!」「落ち着いて!」など、自分自身を落ち着かせる言葉をつぶやいたり、頭の中で繰り返す方法です。また、「いろんな考えの人がいるとわかって勉強になった。」「逆の立場になったら相手に優しくしよう。」などポジティブな言葉を自分に投げかけたり、過去の成功体験を思い出すのもいいでしょう。今、抱えている悩みや問題がすべて解決する日をイメージすることも大切です。この時、できるだけ具体的にイメージしましょう。

 

 

怒りにくい体質を身につける方法(体質改善)

 

★ イライラしたこと、「こうあるべき」を書き出してみよう!

どんなことでイライラしたか、何に対して「こうあるべき」と考えているのか、書きだしてみると、自分がどんなことに腹を立てやすいのかという傾向や自分が大切にしている価値観がわかるだけでなく、書くことで落ち着く効果もあります。ポイントは体調がすぐれているときに実践することです。気分が落ち込んでいるときに行うとマイナス思考に陥ってしまう可能性があります。

また、不安を書き出してみるのも方法です。「不安」を客観的にとらえられ、必要以上に不安を感じにくくなる効果もあります。

 

★ いいことも書き出してみよう!

幸せなことや成功体験も書き出してみましょう。いいことを記録することで、小さな幸せにも目を向けられるようになり、自信につながります。

 

★ 体を動かしてみよう!

有酸素運動やストレッチをしましょう。有酸素運動はストレスを和らげる効果があると言われています。ただし、激しい運動はリラックス効果がなくなってしまうので、軽い運動にすることがコツです。

 

★ いつもの行動を変えてみよう!

無意識にいつも行っている行動パターンを変えてみましょう。そうすることで、悪循環から抜け出すことができます。この時に、自分の理想とする人を思い浮かべるのも方法です。理想の人になりきってみたり、理想の人だったらどんな風に行動したり考えたりするか想像してみましょう。

 

 

自分にぴったりの方法は見つかりましたか?

怒ること=よくないことではなく、怒るべき時にはしっかり怒り、怒らなくてもいい時には怒らずにいられるようになることで、怒ってしまったことを後悔したり、ため込んだ怒りがストレスになり心身に不調を感じることが少なくなるかもしれません…。

 

新しいことを始めるときに最初から上手くできる人はいません。失敗を重ねながら上手くなっていくものです。毎日少しずつでも意識してみませんか?